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「炉心溶融」って公式の用語じゃありませぬ

「炉心溶融」って書くといかにも公式っぽく見えますよね?

四文字熟語だし・・・。

しかし、これって「焼肉定食」なみに非公式な表現です。
さすがに「焼肉定食」を知らないと痛いですが、
「焼肉定食」を学術用語だと思い込んじゃうのはもっと痛い訳でして・・・。

では、なんでこんな事になってしまったのでしょうか?



■「炉心溶融」の起源に迫る!

そもそも「炉心溶融」の元になったのは以下の英語です。

meltdown
又は
nuclear meltdown

「それくらいは知っている!」と怒られるかもしれませんが、
少しだけお付き合いください。

これらの単語の内、より正確に内容を表しているのは「nuclear meltdown」の方です。
meltdownはそもそも「融けちゃう」って意味なので、
この単語だけでは状況によってはピンと来ません。

すると話は簡単です。
「nuclear meltdown」について調べてみれば、
「炉心溶融」についても分かるはず。

もっとも手っ取り早いのがWikipediaです。
Wikipediaの「nuclear meltdown」の項目を見てみましょう。

"nuclear meltdown" from Wikipedia

我々の知りたかったことがココに書かれています。
一部引用してみましょう。

------------------------------
Nuclear meltdown is an informal term for a severe nuclear reactor accident that results in core damage from overheating. The term is not officially defined by the International Atomic Energy Agency or by the U.S. Nuclear Regulatory Commission.
------------------------------

かいつまんで説明すると
「nuclear meltdown」は非公式な用語(an informal term)で、
IAEA(国際原子力機関)やNRC(米国原子力規制委員会)は公式に定義していないとのこと。

------------------------------
However, it has been defined to mean the accidental melting of the core of a nuclear reactor, and is in common usage a reference to the core's either complete or partial collapse. "Core melt accident" and "partial core melt" are the analogous technical terms.
------------------------------

ただ、通常は「the core of a nuclear reactor」が融けちゃう事故のことを指します。
そして、その程度についても部分的に融けちゃうことを指すこともあるし
完全に融けちゃうことを指す時もある。

用語としてはかなりあいまいな用語な訳です。



■「melt」についての誤解を解く

ちょっと考えれば納得してもらえると思いますが、
「melt」って欧米人にとっては無茶苦茶日常語なわけです。

例えば、「melting」と「kids」で画像検索をしてみると、
楽しそうな画像がたくさん出てきます。

「それは、kidsと一緒に検索しているからでは?」

もっともな意見ですが、それなら「nuclear」と「kids」で画像検索してみて下さい。
出てくるイメージは全く違います。

つまり「melt」というのは、子供たちとも親和性のある
そういう語感を持つ言葉なわけです。
そしてもちろん、meltdownもそこから派生してきた言葉なわけです。



■「meltdown」を「溶融」と訳した理由

ここまで見てきたように、「meltdown」を動詞的に訳すのなら
「融けちゃう」か多少真面目に「融ける」みたいな表現が
ある意味適切なわけです。

ですが、ここで日本語の構造上の問題が頭をもたげます。

日本語において、動詞を名詞化する際に、
漢語すなわち熟語にせざるを得ない場合が圧倒的に多いのです。

「融ける」もそれに漏れません。
「歩く」→「歩き」などのように、スマートに名詞化出来ないのです。

「融ける」→「融け」

頭悪そうです。

「融ける」→「融ける事」

間違ってはいませんが「これで名詞だ!」と胸を張って言えません。
これで熟語を作れますか?

「炉心融ける事」

「炉心溶融」以上におかしいです。

「融ける」→「溶解」

なんとなく正しそうですが間違っています。
これは液体に例えば角砂糖とかが溶けることを指すので、
「melt」が指す融ける、
例えば熱で鉄が融けるイメージではありません。
#「溶解」には後者の意味も無いわけではありませんが、
#本来的には違います。

そこで登場したのが「溶融」と言う言葉。

きっと、そんな経緯で「溶融」と訳されたのでしょう。
そして、この訳語が採用されたことで、
公式っぽいイメージが生じてしまったことは否めません。



■原子炉の仕組みを知らないと「炉心」が全く分からない

「炉心」が融けると聞いてどんな状況を連想するでしょうか?

「原子炉が高温になり色々な部分が融けて行き、
とうとうそれが原子炉の中心部にまで到達してしまった」

原子炉の仕組みを知らない人は、
こんなイメージを持っているかもしれません。

炉心がちょっとでも「融けて」しまったら、
それはもうほぼ終わりの状態だと誤解してしまっている。

#言っておきますが、実際問題エライことには変わりはありません。

原子炉においては炉心は燃料棒を指し、
炉心が融けるとは、最も高温になる燃料棒が融けることを指します。

従って、燃料棒の一部が融け始めた状態なら、
エライことではあるけれど対処の仕様は沢山ある。
逆に炉心が全部融けてしまったら、
チェルノブイリなんて目じゃない大惨事になります。

そして、この深刻度合いの差は何万倍どころじゃありません。

だけど、「炉心溶融」なんて言葉を聞くと、
やっぱり普通は最悪の状態を想像してしまいますよね。



■保安院の苦肉の策

この様に「メルトダウン」、「炉心溶融」と言う言葉は
あたかも公式な用語のごとき印象を与え、
またあいまいかつ必要以上の危機感を与えかねない表現と言えます。
従って、事故の当事者としては出来れば使いたくない言葉です。

しかし、これだけ広まってしまった用語を無視する訳にはいかない。

という訳で、保安院は苦肉の策で用語を定義しなおしました。

保安院、福島1~3号機で「溶融」認める

「炉心溶融(メルトダウン)」と一括りで言われかねない状態を
以下の三つの言葉に分けて表現するとのこと。

「炉心損傷」
「燃料の溶融」
「メルトダウン(全炉心溶融)」

原子の炉の仕組みを知っている人間から見ると
「炉心溶融」と「燃料の溶融」は同じこと。

印象操作と言えなくもないのですが、
「炉心溶融」=「全炉心溶融」と解釈されてしまう状況において
この分類・定義は適切な対応だと僕は思います。



原口直敏
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原口直敏

  • Author:原口直敏
  • 洗練されたオタクを目指す、ミドルエイジ。
    持ち前の好奇心により、その知識と見識は多岐にわたる。(本人談)
    RPG風に興味のある分野を紹介しよう。

    【戦士属性】
    自己啓発、ビジネス、経済、投資、語学、各
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